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日別アーカイブ: 2025年9月17日

モンド設計のよもやま話~第15回~

皆さんこんにちは!

株式会社モンド設計、更新担当の中西です。

~変遷~

1|ドラフターと模型が主役——職能の基礎が形づくられた時代(〜1990年代)

  • 設計技術:トレーシングペーパーとドラフター青焼きで図面複写。スタディは手描き・紙模型

  • コミュニケーション:対面と電話・ファックス、紙提出が前提。

  • プロマネ:設計と工事が直列、図面=契約図の完成度で勝負。

  • 価値観:造形・空間体験・ディテールの職能的深みが評価軸。


2|2D-CADの普及——生産性と標準化の時代(1990〜2000年代前半)

  • 設計技術:AutoCAD等の2D-CADが標準に、プロッタで大量出力。

  • ワークフロー:レイヤ・ブロックの図面標準、チェックリスト型の品質管理。

  • プロマネ:VE(価値工学)やコストプランニングが体系化、工程は設計→積算→施工の直列が基本。

  • 課題:設計・施工・設備の**三者間の“食い違い”**が後工程で噴出。


3|BIMの台頭——三次元で作り、干渉を前倒しで消す(2000年代後半〜2010年代前半)

  • 設計技術:Revit/ArchiCAD等のBIMが普及、干渉検出と**数量拾い(5D)**が可能に。

  • 協調:構造・設備とモデル連携、施工段階での**4D(工程)**連動が拡大。

  • 評価軸:CASBEE・LEED等の環境性能評価の導入、日射・照度・エネルギーのシミュレーションが一般化。

  • 成果:手戻り削減、コスト可視化、説明責任の強化


4|計算設計とファブの接続——“つくり方”まで設計する(2010年代)

  • 技術:Grasshopper/Dynamo等でのパラメトリック設計最適化/形態探索

  • 製作:CNC・3Dプリント・DfMA(製造と組立のための設計)、プレファブ/モジュールの活用。

  • プロマネ:IPD(統合プロジェクト)、CM/PMが一般化し合意形成の前倒し

  • 社会要請ユニバーサルデザイン、地域防災、リノベ・コンバージョン(用途転用)の拡大。


5|DX・サステナブル・レジリエンス——都市と運用を“設計範囲”に取り込む(2020年代〜)

  • 現況取得レーザースキャン/点群・ドローンで既存建物をデジタル化、BIMと統合

  • 運用接続デジタルツインで運用データ(温湿度・人流・設備)を設計にリターン

  • 脱炭素運用時CO₂+エンボディド炭素(材料・施工)の両方を設計KPIに。木質(CLT)・高性能外皮が拡大。

  • リスク:感染症・災害・BCP、換気・避難・冗長化をシミュレーションで検証。

  • AI:コンセプト生成・面積計画・法適合の自動チェック支援が登場(最終判断は人)。

  • 法規・調達性能規定化の流れ、データ納品(IFC等)、発注者のアセット視点が強化。


6|タイムラインで一気に把握 ⏱️

  • 〜1990s:手描き・紙模型/直列プロセス

  • 2000s:2D-CAD・図面標準/VE・生産性

  • 2010s:BIM・環境シミュ/干渉前倒し

  • 2010s後半:計算設計・DfMA/モジュール

  • 2020s–:点群×BIM・デジタルツイン/脱炭素・レジリエンス・AI


7|“いま”の主要ニーズ(発注者×設計者×施工者の共通言語)📈

  1. ライフサイクル視点:初期コストだけでなくLCC・運用CO₂・更新計画で意思決定。

  2. データ互換性IFC・BIM360等で一貫管理、属性の入力ルールを明文化。

  3. 設計の説明責任シミュレーション根拠、材料環境データ、避難・換気・耐震の可視化

  4. 協働の設計:**早期統合(構造/設備/施工/維持管理)**で手戻りゼロへ。

  5. レジリエンス:停電・断水・熱波・豪雨のシナリオ設計

  6. インクルーシブアクセシビリティ・ジェンダー配慮・多様な働き方を空間要件に反映。


8|この仕事の“やりがい” 🌟

  • 線が街になる:図面・モデルが風景と生活に変わる長期的な手応え。

  • 制約の中で最適解を導く:法規・コスト・環境・美しさの多目的最適化

  • 学びが尽きない:構造・設備・材料・デジタル・社会学まで横断で成長できる。

  • 合意形成のデザイン:多様な利害を一つの空間に編み上げる編集力


9|やりがい×変遷が交差するミニ事例 💬

  • 点群→BIMで古建築を再生:現況誤差を吸収し、適合改修と省エネを両立。

  • パラメトリック外皮:日射・眺望・コストを同時最適→空調負荷▲15%(概念例)。

  • DfMA×モジュール:現場工期短縮・騒音粉じん低減→近隣合意がスムーズ

  • デジタルツイン:運用データで熱不均衡を是正、快適性と省エネを両立。


10|“今すぐ現場で効く”実務メモ 🧰

  1. モデルの“責任範囲表”:意匠/構造/設備のLOD・属性責任をA3一枚で合意。

  2. IFCエクスポートの前検査:命名規則・階層・原点・単位を週次で自動チェック

  3. 設計KPIの“見える化”:一次エネ、日照時間、可視化率、エンボディド炭素を案ごとに比較

  4. 早期統合ワークショップ:基本計画のうちに構造/設備/施工/FMを同席させる。

  5. ユーザー行動のトレース動線・視線・音環境を簡易シミュで説明。

  6. 代替案は“3解”:コスト解/環境解/デザイン解の三点提示で意思決定を早める。


11|成果が見えるKPI(目安)📊

  • 手戻り率(再設計時間/総設計時間)

  • 干渉検出件数の前倒し比率(基本→実施)

  • エネルギー指標(一次エネ/㎡、UA値、BEI等)

  • エンボディド炭素(kg-CO₂e/㎡)と削減率

  • IFC/属性の整合率(自動チェック合格率)

  • 合意形成速度(主要承認までのサイクル数)

  • 施工段階の設計照会(RFI)件数/週(少ないほど良)

重要なのは他社比較より自チームの基準線を上げ続けること。測る→整える→再設計のPDCAが王道です。


12|これからの建築設計:5つの潮流 🚀

  1. 脱炭素の定量設計:運用×エンボディドの統合KPIで意思決定。

  2. 適応と再生リノベ・コンバージョンが新築と並ぶ主戦場に。

  3. AIアシスト:法規チェック・面積計画・画像生成は補助、最終判断は

  4. データ連携の標準化IFC/BCF/IDSで“モデルが契約の一部”へ。

  5. レジリエンス×包摂:災害・気候・感染症・多様性に強い空間が価値のコア。


まとめ ✨

建築設計は、
手描きの時代 → 2D-CADでの標準化 → BIMでの統合 → 計算設計・DfMA → DXと脱炭素・運用接続
へと進化してきました。

これから選ばれるのは、データで語れる設計合意をデザインする力。そして、街の未来に責任を持つ視点です。
一本の線が、都市と生活を変えます。今日のモデルから、その未来を描きましょう。🏙️

詳しくはこちら!

 

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