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月別アーカイブ: 2025年7月

モンド設計のよもやま話~第12回~

皆さんこんにちは!

株式会社モンド設計、更新担当の中西です。

~社会的役割~

私たちが暮らす家、通う学校、働くオフィス、集まる公園――。
それらすべての空間は、「建築設計」によって生み出されています。

けれどその存在は、意識されることが少ないかもしれません。
建築設計は、社会の基盤をつくり、人の営みを支え、文化と価値観を可視化するという、極めて公共性の高い行為です。
単に“建物を建てる”のではなく、その空間に関わる人々の「暮らし・働き・学び・集う」を形づくる設計行為そのものが、社会を支える役割を担っているのです。


1. 「居場所」をつくるという責任

人間にとって、空間は単なる器ではありません。
そこにいることで安心し、居心地を感じ、意味づけをし、生き方を支える「居場所」になります。

建築設計とは、人に“居場所”を与える行為です。

  • 家:自分に還る安心の空間

  • 学校:子どもが育ち、つながり、社会性を培う場

  • 職場:働く人が快適に、生産的に活動する舞台

  • 公共空間:多様な人が共に過ごす包容力のある場

つまり設計は、**「人と社会をつなげる場所を創造する仕事」**であり、それによって人間関係やコミュニティの質すら左右されるのです。


2. 安全性・快適性の担保:都市と人命を守る使命

耐震設計、防火区画、避難動線、採光・通風計画――。
建築設計には、災害時に命を守る仕組みづくりや、日常的な安全性を担保する責任があります。

特に日本は地震・台風・豪雨など自然災害が多く、建築に求められる防災性能は世界でも極めて高い水準です。

設計者が的確に性能を盛り込まなければ、

  • 倒壊・火災・避難困難などによる人命リスク

  • 高齢者・子ども・障害者にとって危険な空間設計

  • 感染症や熱中症のリスクが高まる環境構造

が発生する可能性があります。

つまり、**建築設計とは命と暮らしを守る“社会インフラの一部”**でもあるのです。


3. 多様な価値観と共存できる空間づくり

現代社会は、年齢・性別・国籍・身体的特性・文化背景などがますます多様化しています。
建築設計は、そうした多様な人々が**“共に在ることのできる場”をかたちにすること**が求められています。

具体的な対応例:

  • バリアフリー設計(高齢者・障害者のアクセス保障)

  • ジェンダーレストイレ・授乳室など、性とケアへの配慮

  • 宗教的配慮(礼拝スペース、靴を脱ぐ文化への対応)

  • 防犯・孤立防止設計(視認性、セキュリティ、共用部の配置)

こうした空間設計は、社会的少数派や声の小さな存在を“包摂”する公共的営みであり、設計者には“社会正義”や“倫理”が問われているとも言えるのです。


4. 地域文化の継承とアイデンティティの表現

建築は地域の風景や歴史、気候、素材、人々の習慣を反映します。
設計者が意識的に地域性を盛り込むことで、文化を未来へとつなげる建築が生まれます。

  • 瓦屋根や土壁、縁側などの日本建築の再解釈

  • 祭りや地域行事に対応した広場や動線設計

  • 地元産木材や伝統工法の活用

  • 景観に調和するファサードや色彩計画

こうした取り組みを通じて、建築は地域の「顔」や「物語」をつくり出し、人々の郷土意識や誇りにも貢献しているのです。


5. サステナビリティと未来への責任

地球環境問題に対応した建築設計もまた、社会的役割の一つです。

  • ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)やスマートビルの普及

  • 自然エネルギーの導入(太陽光・地熱など)

  • 環境負荷を減らす設計(通風、断熱、日射制御)

  • 建築廃材や解体再利用まで見据えた設計配慮

建築は一度つくると長期間社会に影響を与え続けるため、“未来世代に対して責任ある設計”が求められる分野でもあるのです。


設計者は“見えない社会インフラ”の担い手

建築設計の社会的役割とは、空間そのものを超えた、人と社会を支える土台の形成にあります。

  • 空間の安全性と利便性を担保し

  • 多様な人が安心して共存できる社会を支え

  • 文化を継承し、地域に根づいた暮らしを育み

  • 地球環境への配慮という未来志向を体現する

それはまさに、**社会の“静かなエンジン”**とも言えるでしょう。

私たちが気づかないうちに守られ、癒され、つながれているのは、設計者が丁寧に積み上げた無数の「空間の選択と配慮」の結果なのです。

詳しくはこちら!

 

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モンド設計のよもやま話~第11回~

皆さんこんにちは!

株式会社モンド設計、更新担当の中西です。

~多様化~

建築設計とは単に「建物の形を整える」仕事ではありません。
人の暮らし、働き方、社会の変化、気候、文化あらゆる要素を空間に落とし込む、極めて総合的な創造行為です。

近年、この建築設計の世界では、多様化の波が加速度的に広がっています。
その背景には、価値観の変容、テクノロジーの進展、地球環境問題、ジェンダー・多文化共生など、現代特有の課題があります。

以下では、建築設計の多様化がどのように進んでいるのかを、主に「機能」「素材」「利用者」「文化」「技術」という5つの軸から深掘りします。


1. 機能の多様化:空間の“使われ方”が複雑に

かつては住宅なら「家族が住む」、オフィスなら「働く」という明快な前提がありました。しかし今は違います。

  • 自宅で仕事をする(テレワーク)

  • 店舗と住居が融合する(店舗併用住宅)

  • 公園のように開かれたオフィス

  • 学校が地域交流の拠点にもなる

こうした変化により、建築設計には“多用途・複合利用”を前提としたプランニング力が求められています。
特に「ワークプレイスの多様化」や「高齢者住宅+介護施設の統合設計」などはその象徴です。


2. 素材・構法の多様化:サステナブルで柔軟な設計へ

建築材料の選定においても、従来の鉄骨・RC(鉄筋コンクリート)・木造といった枠組みに加え、環境配慮・地域資源・再生素材の活用が進んでいます。

  • CLT(直交集成板)による中高層木造建築

  • 廃材リサイクル素材による仕上げ

  • 土や藁などの自然素材の再評価(アース建築)

  • 3Dプリンターで成形された構造部材

こうした素材の多様化に対応するため、設計者には構造・環境・施工法に対する広い知見が不可欠になっています。


3. 利用者ニーズの多様化:インクルーシブ設計の重要性

現代社会では、年齢・性別・身体的特性・文化的背景などが異なる多様な人々が同じ空間を共有することが求められています。

注目される設計思想

  • ユニバーサルデザイン(誰にとっても使いやすい設計)

  • バリアフリーを超えた“アクセシビリティの文化”

  • LGBTQ+やジェンダーレス対応のトイレ・更衣室設計

  • 子育て世代・高齢者・外国人に配慮した居住空間

建築設計は、“特定の誰か”ではなく“すべての誰か”のためにある空間”をどうデザインするかが問われるようになったのです。


4. 文化・価値観の多様化:グローバルとローカルの融合

国際化が進む一方で、地域の伝統や文化への関心も高まりつつあります。

  • 日本建築の意匠や自然との共生を現代に翻訳するデザイン

  • 多文化共生住宅や、イスラム教徒への配慮(礼拝スペースなど)

  • 地元の気候・風土・景観に馴染む“ローカリズムの設計”

  • フェミニズムやマイノリティ視点を取り入れた空間計画

設計者は、「普遍性と多様性」を同時に扱う感性と視野を求められるようになっています。


5. 技術の多様化:デジタルと人間性の融合

建築設計は、BIM(Building Information Modeling)やVR/AR、AIなど、デジタル技術との融合によって進化の段階を迎えています。

  • BIMでの3D設計・施工シミュレーション

  • ARを活用した現場での構造検証

  • AIによる構造計算や環境シミュレーション

  • DX化による顧客とのオンライン共有・プレゼン

ただし、これらの技術は“人が使う空間”を設計するという本質を補うための道具であるという認識が重要です。
デジタルとアナログ、理性と感性の両方を操る能力が、今の建築設計者には求められています。


建築設計の多様化は「社会の鏡」である

建築設計の多様化とは、単なる手法や素材の選択肢が増えたという話ではありません。
それは、私たちが「どのような社会をつくり、どのように生きるか」という問いに向き合う、建築という“かたちある応答”の多様化です。

気候変動、高齢化、都市過密、ジェンダー平等、感染症、孤独。
こうした課題に対して、建築は常に「空間」で答えてきました。
設計の多様化は、まさにその時代への応答であり、未来への提案でもあるのです。

建築設計者が担うのは、「居場所」や「生き方」を描く仕事
多様化とは、そこに“無数の生き方が共存できる余白”を与える行為なのかもしれません。

詳しくはこちら!

 

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