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皆さんこんにちは!
株式会社モンド設計、更新担当の中西です。
~多様化~
建築設計とは単に「建物の形を整える」仕事ではありません。
人の暮らし、働き方、社会の変化、気候、文化あらゆる要素を空間に落とし込む、極めて総合的な創造行為です。
近年、この建築設計の世界では、多様化の波が加速度的に広がっています。
その背景には、価値観の変容、テクノロジーの進展、地球環境問題、ジェンダー・多文化共生など、現代特有の課題があります。
以下では、建築設計の多様化がどのように進んでいるのかを、主に「機能」「素材」「利用者」「文化」「技術」という5つの軸から深掘りします。
かつては住宅なら「家族が住む」、オフィスなら「働く」という明快な前提がありました。しかし今は違います。
自宅で仕事をする(テレワーク)
店舗と住居が融合する(店舗併用住宅)
公園のように開かれたオフィス
学校が地域交流の拠点にもなる
こうした変化により、建築設計には“多用途・複合利用”を前提としたプランニング力が求められています。
特に「ワークプレイスの多様化」や「高齢者住宅+介護施設の統合設計」などはその象徴です。
建築材料の選定においても、従来の鉄骨・RC(鉄筋コンクリート)・木造といった枠組みに加え、環境配慮・地域資源・再生素材の活用が進んでいます。
CLT(直交集成板)による中高層木造建築
廃材リサイクル素材による仕上げ
土や藁などの自然素材の再評価(アース建築)
3Dプリンターで成形された構造部材
こうした素材の多様化に対応するため、設計者には構造・環境・施工法に対する広い知見が不可欠になっています。
現代社会では、年齢・性別・身体的特性・文化的背景などが異なる多様な人々が同じ空間を共有することが求められています。
ユニバーサルデザイン(誰にとっても使いやすい設計)
バリアフリーを超えた“アクセシビリティの文化”
LGBTQ+やジェンダーレス対応のトイレ・更衣室設計
子育て世代・高齢者・外国人に配慮した居住空間
建築設計は、“特定の誰か”ではなく“すべての誰か”のためにある空間”をどうデザインするかが問われるようになったのです。
国際化が進む一方で、地域の伝統や文化への関心も高まりつつあります。
日本建築の意匠や自然との共生を現代に翻訳するデザイン
多文化共生住宅や、イスラム教徒への配慮(礼拝スペースなど)
地元の気候・風土・景観に馴染む“ローカリズムの設計”
フェミニズムやマイノリティ視点を取り入れた空間計画
設計者は、「普遍性と多様性」を同時に扱う感性と視野を求められるようになっています。
建築設計は、BIM(Building Information Modeling)やVR/AR、AIなど、デジタル技術との融合によって進化の段階を迎えています。
BIMでの3D設計・施工シミュレーション
ARを活用した現場での構造検証
AIによる構造計算や環境シミュレーション
DX化による顧客とのオンライン共有・プレゼン
ただし、これらの技術は“人が使う空間”を設計するという本質を補うための道具であるという認識が重要です。
デジタルとアナログ、理性と感性の両方を操る能力が、今の建築設計者には求められています。
建築設計の多様化とは、単なる手法や素材の選択肢が増えたという話ではありません。
それは、私たちが「どのような社会をつくり、どのように生きるか」という問いに向き合う、建築という“かたちある応答”の多様化です。
気候変動、高齢化、都市過密、ジェンダー平等、感染症、孤独。
こうした課題に対して、建築は常に「空間」で答えてきました。
設計の多様化は、まさにその時代への応答であり、未来への提案でもあるのです。
建築設計者が担うのは、「居場所」や「生き方」を描く仕事。
多様化とは、そこに“無数の生き方が共存できる余白”を与える行為なのかもしれません。